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太郎くん




えっへん★


いかにも「えっへん★」と
得意気に言っていそうな雰囲気の太郎くん
下描きをしている時も
そのちょっと得意そうで可愛らしい表情をしながら
「ママ だーいすき!!」
ずっと言っていた太郎くん

勿論、個性の違いもあるのでしょうが
猫がおしゃべりなのに対して
犬は寡黙なのかな? と思う程
「ママ だーいすき」以外のことは
口を閉ざしたまま殆ど何も伝えてくれませんでした

それがふとした瞬間に
「・・・まもるからね・・・」
という言葉が湧き上がって来ました
その言葉のあとは
今迄ずっと押さえていた気持ちを
“わーっ”とぶつけられる感覚に陥りました
「ずっとずっと、ボクがママのこと 守るからね」
を主体に言葉にならない様々な“今の想い”みたいなものを
太郎くんは伝えてくれました


人と動物…

限りない愛情を注がれて大切に育てられたコ(動物)との
強い絆を改めて思い知らされた気がします


お星さまになってしまった太郎くんを
少しでも形あるものとして
太郎くんのママの許へ帰して差し上げられれば
今の太郎くんの想いをガラスを通じてお伝え出来れば
その気持ちで
「太郎くん、ママの所に帰ろうね」
呟きながら一心に彫りました

出来上がったものをお届けする際に
お手紙を添えたのですが
お手紙を書いている最中、お線香の香りが強烈に漂ってきて
我家で使用しているものと違うその匂いに
「ああ、太郎くん来てるな」
そう思わずには居らませんでした


★★★★★

愛するものとのお別れはとても辛いもの
生は楽しく、死は苦しい
生きている私たちはそう考え
また、死への恐怖や不安
そして もう、その温もりを直に感じ
心和ませてくれるその表情や姿を
永遠に見られなくなってしまったことに心引き裂かれ
亡くなったものへ想いを馳せては悲しみにくれます

けれど
死者からの観点からすると
それは、ひょっとしたら違うのかもしれない
太郎くんがお別れを悲しんでいる様子は伺えなかったのですが
飼い主さんであるママのことを とても案じていたのです

本当はこの世でのお別れは
辛くも 悲しくもないのかもしれない
魂はずっと不滅で、目には見えずとも
私たちのすぐ側に 寄り添ってくれているのかもしれない
生きているときも、そして死後も
動物たちは無償の愛を
私たちにありったけ注ぎ、見守り続けてくれているのかもしれない

そう、手に届く距離で
そして
生きている時よりもずっと近くで…

ふと思い立ち、この数ヵ月後に
同じ写真で太郎くんを彫ったのですが
その時の太郎くんは
なんだかとても安心している感じがしました
後に伺ったお話によると
丁度その少し前に、太郎くんのママは
太郎くんを失った悲しみから立ち直られたとのことでした

「現世でのお別れを悲しまないで。いつも、一緒だから悲しまないで」
そう、太郎くんから教わった気がします
だけど それはとても難しい課題…

姿が見えない分
彼等の心の欠片をお届けできれば
身近に感じて頂ければ嬉しいです







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作品の画像は彫刻が一番浮き上がって見える条件下で撮影をし
更に見え易いように色調を補正してあります


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